映画『ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド』ネタバレ感想〜昔々あるところに・・・〜
タランティーノが描くハリウッドむかし話
2019年公開 米映画 監督クエンティン・タランティーノ
出演 レオナルド・ディカプリオ ブラッド・ピット マーゴット・ロビー他
星★★★★★★★★★☆ 9/10
タランティーノはドンデン返しが多い監督でもあるので、前情報を入れずに鑑賞。
それが吉と出る場合もあるが、悪くなる時もある。
前情報を入れずにとは言うものの、実在したシャロン・テート殺害に関する映画ということは認識していた。
だもので、てっきり女優殺しの謎を追うサスペンスかと思っていた。
いつサスペンス劇が始まるだろうか・・・と観ていたのだが、一向に始まる気配は無く、それどころかディカプリオ演じるリックとブラピ演じるクリフの特に内容の無い会話に終始する。
だがしかし、この2人のかけあいが良く、余裕で間が持ってしまう。
雇い主と雇われている側という身分の違い、家や乗る飛行機(リックはファースト、クリフはエコノミー)のチケットも明らかな隔たりがあるにも関わらず、最後まで友情が続いたのが良かった。
リックとクリフは架空の人物のようだが、この作品には実在の俳優たちも登場している。
スティーブ・マックイーンには、最高の戦争ドラマ『バンド・オブ・ブラザーズ』や世紀のクソ映画(褒めてます)『ドリーム・キャッチャー』のダミアン・ルイス。
マックイーンに似ていると思っていたのは、自分だけでは無かったようだ。
遠い目で陰口を叩く、という大スターらしからぬ扱いながら魅力的。
カンフー界の大スター、ブルース・リーも登場するのだが、これが横柄で傲慢、小物感たっぷりに描かれている。
てっきり作中でもブルース・リーのそっくりさん設定なのかと思うぐらいの扱いであった。
リーの遺族やファンからは大パッシングを喰らったようだ。そりゃそうだ。
ただ、タランティーノ本人もリーのファンであるので、悪意は無いと思うんよね。
個人的にも不快感無かったし、なんか魅力的なキャラに見えた。
これがタランティーノマジックか・・・
SATSUGAIされるシャロン・テートの日常も描いているのだが、まぁこれが輪をかけて特に意味の無いシーンの連続。
でも、おもしろいのだから不思議なんだなぁ。
映画館でわざわざ「これ私が出てるの!」とかなんとか言って入らせてもらったり、上映中も周りの観客の反応に喜んだり、と純粋で子供のような承認欲求がとてもかわいい。
ハーレイクインもそうだが、マーゴット・ロビーはこういう天真爛漫な役がよく似合う。
〜以下ネタバレ〜
クライマックスまでダラダラと、それでいて妙に目が離せない会話劇が続いた後、突如として物語はトップギアに入る。
チャールズ・マンソンファミリーが、テートちゃんの住むポランスキー邸を襲撃しに来たのだ 。
これでテートちゃんも終わりか・・・と思ったその時、我らがリックが登場。(泥酔モード)
家の前でゴソゴソしていたマンソンファミリー連中を一喝し、追い返す。
しかし、これで帰るマンソンファミリーではなく、今度はリック邸を襲撃する。
そこへ、犬の散歩からクリフが帰宅(クスリでラリパッパモード)
愛
犬のブランディと共にマンソンファミリーをフルボッコ。
発狂したマンソンファミリーの1人がプールにいたリックを攻撃しようとするが、火炎放射器で応戦。見事丸焼きになるのでした。メデタシメデタシ
この一連のシーンは、手首を食いちぎられたり、金玉を食いちぎられたり、顔面を執拗に叩きつけられたり、と中々のゴア表現にも関わらず、笑いが止まらなかった。
やりすぎると逆にコメディー感が出るというのは、80年代のホラーでもよく見かけた光景である。
さぁこれからテートちゃんにどう絡んでいくのか、というタイミングで映画は終わりを迎える。
え?どういうこと?といったところだが、タランティーノ特有のスカシだろうか。
いや、タランティーノはシャロン・テート殺害を無かったものにしたのだ。
だからこそのワンス・アポン・ア・タイム。
昔々あるところに・・・で始まる物語にはハッピーエンドがつきものだ。
まとめ
デカプーといい、ブラピといい、若い頃はアイドル俳優扱いだったが、本当に良い役者だ。
出演する作品にハズレが無いし、存在感が凄まじいのに、自然にそこにいる感じがする。
この作品には、実在の事件をベースにしたことで、完全に騙されてしまった。
思えば、タランティーノといえば結末が予想外であることがほとんど。
次回作で引退と公言しているが、ドンデン返しで「辞めるのや〜めた」を切実に希望する。
通信終わり